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路地のあかり ~ 悪童追想

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それでは、友人がデザインした本、
路地のあかり ですが

言わばエッセイの部類で、
著者の体験から様々なエピソードが披露されている
飾り気のないさりとて、淡々ととも言えない
優しい表現でたくましく語り上げている

僕は見ていないがこの本を書いた松崎さんと言うのは
映画“学校”の原作の著者で西田敏行が扮した先生役のモデルとなった人であるらしい

太平洋戦争終戦の年、満州で生まれ、続々と幼子の死んでいく中、
生き残り、家族と長崎に引き上げる、
原爆の傷跡の中で貧しくも諦めず真っ直ぐに生きていく少年時代
いつからか志した教諭の道、
そして東京下町で長く夜間中学の先生として種々の生徒たちと接した時間、

夜間中学の生徒達も時代とともに推移していく
貧しく親の仕事の手伝いで学校に行けなかった勤労少年から
一時期は外国人の労働者が増加し、
また昨今では引きこもり、問題行動を起こし一般の中間中学を追い出された者たち
これらに対しての著者の先生としてのユーモア深い接し方ももちろん胸を打つけれども、


何よりも響くのは
自分の少年時代と、それを重ねて見る瞬間だろう


僕自身は戦後の混乱も知らないし、貧困であったとは言いきれない

それでも毎夜母親の迎えを待って帰った夜道
東京郊外の、草っ原の多く残る、町の安普請な団地住まい
預けられた保育園での革新的、言い方を変えれば破天荒な生活ぶり、
政治に加担し情熱を注いだ父に対し、収入や仕事の多くを担い、
それでも子育てを地域で作り上げた母親、
その地域そしてコミュニティーに似たような環境の、
雑草のような育ちの同年代の子供、そして各々の親がおり、
取り巻いたその一時代は、わけもなく“路地のあかり”に何かが触れた

そういうわけで、僕自身が憧れさえ時に持っても
結局金満の富裕層の態度と言うのは鼻持ちならない、

体中に絵具を塗って教室を駆け回り、
机に立って立小便し、
先生に、親に、外で立たされたようなガキが
気の利いたエスコートなぞ、知る由もないが、
そういう出自を一切恥じていないし、
その幼年時代が“おしいれのぼうけん”と言う本に模られて
今も記憶されている事に、
むしろ胸を張りたい。


今回の本は
それを後押しさえする本でした。



おしいれのぼうけんの
ピエール瀧とスチャダラ兄の仕組んだ
謎掛け的な顛末はこちらで。
by c7 | 2014-10-25 16:26 | 愛読愛聴


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