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読書 ~ 春を背負って





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6月、
転職のはざ間の有給消化中
のんびりとひとりがらがらの映画館で
富山県警山岳警備隊に敬意を込めて涙した
“春を背負って”

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の原作が、舞台は実は後立山連峰ではなく、
奥秩父、しかも彼の日、トシボンヌとピロ子ちゃんと遡上した
釡の沢西俣、の尾根向こうの架空の山小屋とのことで
なんだか興味をそそられて読んでみた

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映画との共通の設定もあれば、違いもあって
作風は娯楽小説の部類となり文体もやや青臭くあるが
登場人物に共通する、競わず急かず、
分相応こそ幸せの証し、と匂わす生き方は、
なんとなく去年熱を上げた老子の道徳経めいた共通項を感じた。

経済社会でドロップアウト、と呼ぶものを
老子はきっと誉めるんじゃないかなと思いもする


タイトルの春を背負って、は、映画を見ても今一つピンとはこないが
この本を読むと
それは小屋開けの早春、重い荷物を歩荷で担ぎ上げ、
その歩いた距離こそ宝だとつぶやく初老のゴロさんと
主人公の魂の邂逅なのだと得心する

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そしてまた
なんとも引っかかるのが、
映画のストーリーとは全く別に、
6つか7つのエピソードが山小屋を舞台に
オムニバス的に語られる原作の、
そのほとんど全てに夫婦の死別、あるいは離別が盛り込まれ、
残された男ないし女にどのような愛が現れるかが繰り返し語られる

そもそも主人公の亨成年が父を亡くし、山小屋を継いで主人となる設定
彼のまだ生きている母と、生前の父の心の交流みたいなものが
箇所箇所にばら撒かれてもいる

こういうのは著者の執念というか執着というか。
羊たちの沈黙の言葉を借りるなら
その人の渇望、だろうか


ちなみに
笹本稜平の渾身のと思われる山岳小説
“還るべき場所”も続けて読んでみたが、
これも主人公がK2で最愛のパートナーを失う場面からスタートし
その女性の死を克服していく心の変遷がサブテーマになっている
自分が逝ってしまった後の妻、
ないし自分がかみさんを失った後、
何を想うだろうなんてことを思った

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少しネタバレの記事になったし
続けて還るべき場所についても
読後感を綴りたい


C7
by c7 | 2014-08-09 12:48 | 愛読愛聴


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