還るべき場所 笹本 稜平 ~じつは逝きそう




さてそれでは
最近は山に行かなくても
山を想っただけで
ファーっとかなる境地まで達しつつある
ので

読書も然りと言うことで
山岳小説
“還るべき場所”
著 笹本 稜平

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舞台は現状でやはり8000M峰の王者
K2

しかし本書はゴッドウィンオースチン氷河をはさんだ
ブロードピークの公募登山を介して物語が進行していく

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出版順で言うなら本作のほうが
映画化された”春を背負って“
よりも数年前に刊行されている、

が、心温まる春を背負っての青春っぷりとはまた対照的に
本書では激しくも超高所登山、初ルート登攀などの
トップクライマーたちがしのぎを削る荒々しさが
幾度となく語られる
ヒマラヤ、カラコルム山脈、ヨーロッパ三大北壁
厳冬期のマッキンリーなどが随想され
高い山に思いを馳せる身としても
妙にうっとりとされられる、とともに
60を過ぎた富豪が次第に登山の魔力に魅せられ
今まで自分の築いてきた財産や地位よりも
この瞬間に最大限の生を感じる、と言わしめ
マロリーがかつて発した
”そこに山があるから“という言葉は
回答不能な問いに対しての体のいいジョークのようなもので
登山者は皆この言葉では表せない深遠な高み、些かに矛盾をはらんだ
情熱を、注ぐしかなく注いでいる、など

登山がなんであるか、斬新にそして重厚に表現している


もちろん
現実の山登りというのは里山登りから、夏、沢、厳冬期、
キャンプとしての登山、など
多様なものだし、
誰しもがヒマラヤ等のトップクライマーと同じように捉えている分けでは無い


それでも
山に登ることに熱を上げた人間は
一度はこう感じたと思う
つまり、登山とは凝縮された一生で、
濃密に生きた、と実感し、
振り返った時に見える道はまさに
自分が生きてきた道のように見える





下界では、奸計などあり、
不穏な会社乗っ取り劇、産業に身を捧げた
周りを囲む男たちなども織り交ぜながら
それでも本作で大団円となるのは
主人公と、
K2で生き別れになった最愛のパートナーの
死を超えた出会い
そこでこの青年の自浄が完結する



これを以ってやはり笹本良平氏は
死別を乗り越えた男女の愛を求道していると
想像に難くない
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# by c7 | 2014-09-04 12:35

カツオとJD ~ とわたし







最近
本だ、娘だと
そんな類のアップの頻度が多い。が
立ち返ればこのブログのタイトルは
目覚めの酒で
痛飲履歴を保存しようとして始めたのが出自

60を過ぎたら茶の味でも覚えようかとも思ったが
従兄からの鶴に一声にやはり“死ぬまで飲む”を肝に銘じ、
奄美徳之島で黒糖焼酎を飲み続け、そうして世界最長寿になった
泉重千代翁を、目指す老獪とし、
オールドパー爺さんのように150うん才まで生きようと
決意も新たに、この夜はもちろん一人酒(愛猫ニコと)


何度か書いたことかもしれないが
うちのネコさんは(猫ではない)
ニンニク臭をこの世の敵のように嫌っていて
二郎でニンニクマシマシの豚ダブルを食った後
帰宅するとほとんど紛争の域に家庭は不和になる

なので娘と嫁が実家に帰省のこの間に、
心安らかに晩餐を堪能す
カツオの腹を刺身に
わさびも生姜も間違い。

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正解はニンニクで。


迎えるのは紅茶色ともいわれる琥珀の友人no.7
ジャック・ダニエル
しかもなんか風変わりなスチール缶に入っており
また胸が熱くなってつい買ってしまった一品。

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蒸留酒は醸造酒と違ってそれほど肴を限定しない、
カツオの一柵を、これだけをつまみに晩酌を楽しむ

ちなみに友人がピッツアで熱燗がいけるか、
試そうとしていたが強くお勧めしない


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グラスは久しぶりに出したよバカラのベルーガ一つだけ。
もちろんベアでありますが夫婦でという機会はほとんど今は無く、
ネコさんはもっぱらワインかビールしか飲まなくなった。
が、しかしそれはそれ

外に出れば7人の飲み助仲間がいる
旅に出ればどこでも盃を持って待つ人もいて、
酒の相手はこれこそと思う。

かみさんとは、日々少しのビールかワインで
行儀良い父という座に甘んじる、

いまや家族なくしては
きままな酒も楽しめなくなってしまった


c7
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# by c7 | 2014-08-15 12:53 | 美酒

読書 ~ 春を背負って





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6月、
転職のはざ間の有給消化中
のんびりとひとりがらがらの映画館で
富山県警山岳警備隊に敬意を込めて涙した
“春を背負って”

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の原作が、舞台は実は後立山連峰ではなく、
奥秩父、しかも彼の日、トシボンヌとピロ子ちゃんと遡上した
釡の沢西俣、の尾根向こうの架空の山小屋とのことで
なんだか興味をそそられて読んでみた

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映画との共通の設定もあれば、違いもあって
作風は娯楽小説の部類となり文体もやや青臭くあるが
登場人物に共通する、競わず急かず、
分相応こそ幸せの証し、と匂わす生き方は、
なんとなく去年熱を上げた老子の道徳経めいた共通項を感じた。

経済社会でドロップアウト、と呼ぶものを
老子はきっと誉めるんじゃないかなと思いもする


タイトルの春を背負って、は、映画を見ても今一つピンとはこないが
この本を読むと
それは小屋開けの早春、重い荷物を歩荷で担ぎ上げ、
その歩いた距離こそ宝だとつぶやく初老のゴロさんと
主人公の魂の邂逅なのだと得心する

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そしてまた
なんとも引っかかるのが、
映画のストーリーとは全く別に、
6つか7つのエピソードが山小屋を舞台に
オムニバス的に語られる原作の、
そのほとんど全てに夫婦の死別、あるいは離別が盛り込まれ、
残された男ないし女にどのような愛が現れるかが繰り返し語られる

そもそも主人公の亨成年が父を亡くし、山小屋を継いで主人となる設定
彼のまだ生きている母と、生前の父の心の交流みたいなものが
箇所箇所にばら撒かれてもいる

こういうのは著者の執念というか執着というか。
羊たちの沈黙の言葉を借りるなら
その人の渇望、だろうか


ちなみに
笹本稜平の渾身のと思われる山岳小説
“還るべき場所”も続けて読んでみたが、
これも主人公がK2で最愛のパートナーを失う場面からスタートし
その女性の死を克服していく心の変遷がサブテーマになっている
自分が逝ってしまった後の妻、
ないし自分がかみさんを失った後、
何を想うだろうなんてことを思った

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少しネタバレの記事になったし
続けて還るべき場所についても
読後感を綴りたい


C7
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# by c7 | 2014-08-09 12:48 | 愛読愛聴

超高所登山とは、~ 竹内洋岳氏




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時の経つのは、早いもので、
それも年齢によるものだろうけど
話題になった8000m峰の14サミットを日本人で初めて達成した
竹内洋岳の最終山行、ダウラギリの登頂もはや、一昨年のことだった。

その竹内氏のインタビュー本を読み終え、
そうであろうかと思ったこともあり、
つらつらと雑感を書こうかと。



まず超高所登山をやろうとするなら、気のいい人、では
成り立たないのかもしれないと言うこと。


古いドイツオーストリアのパートナーとの山行以降、
高所登山普及に目覚め、一般から同行者を公募するも、
カメラマンの中島氏などもその憂き目にあうが、
最後は体力を見透かされ、登頂断念、待機を命ぜられる

自身も登頂を諦めて撤退した際に
下山後ベースキャンプで他人に当たり散らし、蹴りを入れたなどのシーンの描写もある。


自分自身が最高のコンディションで計画し、ギリギリのラインでの成功もあるわけだろうから、
明らかに能力に劣る同行者に対して、時に冷徹に対応するしかないのだろう

頑張って一緒に行こうよ、的なそれは8000mの高みでは存在していない。


そしてこれは著者の塩野が巻末で書いているけれど
竹内洋岳は圧倒的に個で存在しているのだ

人の助力で登山が成り立っていることは承知なものの
最後のプッシュを進めるか、止めるかは
アドバイスなどほとんど顧みず、自分の判断だけが、唯一自分を押し上げるのだと断定さえしている
人が登れるかどうかは参考にならない、問題は自分が登れるかだ

そういう決断の上で行動している、


私などここのところの転職で協調性なども気にし、いわんや人の評判さえも思ってしまうひ弱さ。
かの人の絶対的な個、に憧れても届きもしない。

がしかし、
山に行くことで敢えてその個に向き合えるように感じることもあるのは事実
前人未到ではないけど、滝を責めるとき、
積雪期の急登を乗り切るとき、

自分にも人には任せられない、個が生まれるような感じがする
そしてそれは低地生活にも、大いに役立つと思っている。
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# by c7 | 2014-07-17 12:19 | 愛読愛聴

新潟探訪  ~ 五頭山登頂、再開の後のお土産






顔本で先告のとおり、旧知の友人(?)を訪ね
新潟に行ってきた。
新潟市の東に位置する彼らの住まいからほど近い五頭山に登ったところ、
これが案外いい山で、
また梅雨時期の平日と言う日程のためか、
限りなく静かな山旅を堪能させて貰った

麓には温泉も多く、そのうちの地元の方々が日がな利用するような
共同浴場で湯を頂いた




元同じ会社におり、ある種辛酸を嘗めさせられた仲間として
語るべきことは多い。夜はワインを3人で2本ほど、4時間ほど、
話は尽きなかったが、まあほどほどにそして
とある会社の非難めいた話はここでは言及しない。


翌日案内された地元の土産センターには、
お酒がずらり

新潟の酒のタイプは辛口淡麗が代表格
しかしどちらかと言うと旨口の酒が好みなので
店員さんに素直に教示を求めたところ、麒麟山と
鶴齢を勧められた、ので、

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鶴齢の純米吟醸を頂きました。


米どころ魚沼からの酒は甘く柔らかく、くどくなく飽きない
その原料米もあまり耳慣れないが、

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際立った個性と言うよりも調和して場を乱さない穏健な味でした


今回の酒器は
台湾を旅した友人が、お茶用に買ってきてくれたもの

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これを盃に、この夜もこなから。
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# by c7 | 2014-06-27 16:05 | 美酒