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田中森一 ~ 性善説性悪説







つい先日、その生涯の幕を閉じた
バブル時代を駆け抜けた闇の紳士達の守護神。

の名目で出された本を読んだ、
著者田中森一。
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何故読んでみようと思ったか覚束ない、
もとより経済にも経済犯罪にもそれほど興味はないのだし、

一点、汚れ者、落伍者と言う符号なら自分も持ち合わせている
これを探るに足る本なら読後感もまたあるだろうと思った。

が。



この著者の、元特捜検事そして弁護士の後、
詐欺事件(冤罪を主張)で4年超の実刑判決、服役を経た
波乱万丈の人生は
長崎の貧しい漁村から始まる。

逆境をばねに、苦学し、夜学に通い、学んで立派な人間になりたいと願う。
また、その息子を送り出す漁師の父親の描写には
正直目頭を熱くし、歯を食いしばって読むような思いもさせられた、
ものの、

田中青年がやっとの思いで岡山大学に入学して直後から、
すぐにもその危険で粗野な正体が晒け出されてしまう

齢60を過ぎて著したこの本は確かに淀みなく、
一見整然とし、田中森一と言う人間を正確に現しているようだが、
どうしてもきな臭さを禁じ得ない


人間は、強くもあれば弱さもあり、
人情にもろいと言いながら、冷酷に他人を処断する
カネに清廉な時もあれば、武者ぶりつくほど浅ましい時もある

その時々をこの人は自分の都合の良いように表現しているように見えた。

法曹界の意義はドブさらい、盗人にも三分の理
と気骨を露わにするが、
特捜検事時代には大層権力を笠に着た風に思えるし、
大物ヤメ検として弁護士に転身してからは
汚い真似はしていないというものの
成金さながら、昔の貧しさの反動のように金にまみれる


ヤクザは必要悪、法律を守るだけが人間ではない、
と公言しながら、しかし“正義”を声高に語り、論語に心酔する。

ちなみに僕が与する老子の道徳経(タオツーチィー)
と孔子の論語は決定的に違う、根本が違う。
儒教として日本でも論語は長く広く支持されているが、
個人的にはタオにこそ隠された処世訓があると信じて止まない

愛すべき酔っ払い詩人ヘンリー・ブコウスキーの詩の一片を借りるならば
”つまりは平和を説く者が一番平和から遠い、愛を説く奴には愛が無い
正義と言う奴が、実は最も世界を不平等なものにしている“


田中森一が悪人であるかは問題でないが
彼自身が自身のちり芥を知り、その上で論語を隠れ蓑にしていたと自覚していたなら、
これは
重罪だと思う。


人間は悪でもあるし善人でもある。
それでもいいし、それはどちらでもいい。
ただし
悪人であれ、文章を残すならば潔くなければならない。
欲得で自分を美化するのは恥ずべきことだ
その罪を、この人は犯したのかもしれない
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by c7 | 2014-12-08 21:20 | 愛読愛聴