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ヨーロッパ~コスタスとわたし



”ヴェリーウェンディーチュデーイ!!”

昼のビーチでは親切で人好きのする白人カップルが
お勧めの浜辺をこっそり教えてくれる、
そちらは風も凪いでいる。
タップり陽を浴びて火照った体で
オールドシティー。
午後8時

細道の奥にひっそりと灯りの燈る、
”タベルナコスタス”

タベルナコスタス
くどいようだけどタベルナは食堂の意味です。
”例えて言うならおさむ食堂”

タベヨウヨコスタス。

日本人贔屓の噂もあった、
ちょっとそれは気になってた、商売上手なのかって、
観光客を騙すなら、まずは日本人からだから。

が、しかし、
入り口に顔を出した店主思しきおじちゃんの顔に
いきなりやられた。
思い出が心を殴打するようだ、
まるきし渋谷ムルギーカレーの先代、

推定90歳のC3POのようなあの先代の、
ごとき、かくかく動きのど近眼めがねフェイス、の大声で呼ぶ。
”いいからいいから、入った入ったーー~”
こんなおやじに人を騙すようなレストランは決して出来まい

ちなみにコスタスとはギリシャで一般的な男子の名前
ははーーん、
おやじだべ、いい味出しとる。
などと思い巡らしていると、

息子風の若者が、流暢な英語でオーダーなど
てきぱきと取り成す。

取敢えずはギリシャ名物松脂入りの白ワイン
レツィーナで、今宵幕開け。
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イカのから揚げ、”カラマリ”
真っ赤なトマトのサラダ、
うむうむ、追加のメインディッシュ、白身のグリル

なんと言うのか・・・
上手いと言うより素材がと言うのじゃなく
難点を挙げるポイントがまるで無い味。
さじ加減、ちょっとでもしくじれば
辛かったり、濃すぎたりになる要素が、がまったく無い

まるで君等の心のような味だね、コスタスさん

と言いつつ感動しきり、食事を続けるとやがて

にゃーんと。
いつの間にか椅子の下には
猫三匹、
ここだけではないけど、しかしギリシャはどこにでも猫が。

パンをあげるが、拒否。
イカの残りをあげようとしてもわりと興味なし。

しかしなぜかグラタンの残りをあげると
ご満悦。

 ヨーロッパ~コスタスとわたし _f0052956_1941784.jpg

なんじゃーー君らーー、
いくら肉食といえ、日本では動物性脂肪を食べる猫は
ほとんど見かけないけど・・・
お国が違えば動物の食事情も違う。
しかしその可愛さはメジャー級、

心和むひと時

に、
一匹の小さな蜘蛛が椅子の連れの背もたれに。(ところで蜘蛛って一匹二匹でいいですか?)

虫も殺せぬ仏教の国の人、我が猫恭子が
戸惑っていると、
いきなり巨大ハンドで握り潰した奴がいる。
振り返ると彼は一言
"ほんのちっちゃな蜘蛛じゃなー-いか、おいぇ~"

このしゃべり、態度、アメリカ人に違いなく。
白人カップルは終始笑いあいながら
タラモサラダとウーゾを平らげ帰って行きました。
いつか彼らの耳元でチベット死者の書を逆さに読んで、
蜘蛛に生まれ変わらせてみようと思います。

しかし本当におせちでもククレカレーでもなく、
本当に素晴らしいコスタスのもてなし、そして味わい。

息子君にふと尋ねる、
コスタスって、あの、君のお父さんの名前かい?

”コスタスは僕です”

なーーーにーーーー?

もっともそれはお祖父ちゃんの名前で、
店の名はその時にちなんでつけたんです。

なるほどー、そうか、
そして君は祖父の名を受け、今も店を切り盛りしてるわけか 。
父は厨房で、そして息子たち(他に兄がいた様子)
がホールで。
みればコスタスは実に沢山の国の言葉を話し、
沢山の人たちと、愉快に接している、
あー、なんだかわしゃ、こんな小さな町の
暗がりの路地の奥で、一つ家族がレストランを3代も
続けている事だけで涙腺が緩みそうだよコスタス、

そしてコスタスはいつか東京に行くのが夢だと語ってくれた。
彼の着ていたTシャツのプリントには大きく


O
K
Y
O

もちろんそれを買ったのは東京ではなく、
ギリシャだと言っていたけど。

それを聞いて思わず、名刺を渡してしまった、
メールのアドレスも書いてあるし、聞きたいことがあったら
何時でもメールを寄越すんだよコスタス
そう思っていると、
まさかメールは日常ではないのけ?
”東京に、もし行けたら、ここに電話すればいいんだね?”

笑顔で見つめるコスタスがなんだか切ない。
考えてもみれば国外の観光に飛びまわれる人間は
世界で言えばまだまだ少数だろう、
コンピューターだって一人一台の暮らしは遠いのかもだ。
こうした旅の出会いでは、自分たちの足元だとて不確実で浮ついていて
前のめりで上面だらけだと、はっと気付かされる。

有難うコスタス リアルな料理を有難う。
まだ他にも客がいるのに、脇で一家団欒、夜の食事を始めてしまう
君たちの奔放さに乾杯だ。

チーズや揚げ物の油でじつは
激しく満腹のあとの、
サービスのケーキはひたすら甘かったけど
その心のスゥィートネスは、井戸田某を軽--くオーバードライブだ

ギリシャを代表するお酒、ウーゾは好きかと聞かれ
昨日も沢山飲んだよ、そう答えた。

会計を済まし、パパ(C3PO)とは抱擁を交わした、
幾分わたしも酔ってるな・・・
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帰り間際、呼び止められたコスタスの手には
ブルーの瓶のウーゾが一本
差し出すその手と堅い握手を交わして店を出た

今も封を切らずに取ってある、この瓶は我が家のこの旅の
記念の宝です。
by c7 | 2005-10-17 21:52 |


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